花粉症



 春先になると、必ず話題になるのが花粉症です。私達が若い頃には聞いたこともなかった症状のような気もしますが、以前(30年前の百科辞典)には花粉症についての項目さえない。医学の急速な進歩で細かく分類されるようになって見つけ出された症状らしく、最近では、我も吾も花粉症の所為にしている向きもあるようにも思えるが、あくまで素人判断である。
 主に多いのが杉花粉だそうだ。終戦後、どこの山も木が切り倒されて「
ハゲ山」になっており、疎開先の町や村の山には、戦後復活の掛け声に、まず山に成長の早い「」の苗木を植林し、産業界の育成、バラック作りの家が何年後かには建てられるようにと小学1年の我々まで動員して山の麓から頂上まで植え尽くされるまで何日もかけて苗木をせっせと植えさせられた。
 それから、もう半世紀以上が過ぎ何回も植え替えられたことでしょう。テレビの画面に映し出された杉の木のなんと立派に生育したことか。花粉の飛び散る光景に思わず心がドキとします。何も知らずに植林した「
」がこんなに人々を苦しめているのかと思うと、なんともいいきれない辛い思いがします。
 今まさに、「
杉花粉」が飛び交う季節がやってきた。毎年花粉症で悩んでいる人には、くしゃみや鼻水が出たり、涙をこぼしたり、かゆみを感じたりで、この時期気の重いことでしょう。杉花粉などの異物(抗原)が入って来ると、それを迎え撃とうと免疫グロブリン(抗体)が作られて、抗原と抗体が体内で激しく戦うと刺激で体内の細胞からヒスタミンが放出されることで起る。 まだ症状が出ていなければ、「初期療法」で使われる抗アレルギー剤で症状が出る前に服用して予防しよう。この薬は3、4日たたないと効き目が出てこない。
 人によっては、症状が出やすい人と出にくい人がおり、また、軽かったり重かったりアレルギーの所為だ。現代人はアレルギー体質の人が多くなった。花粉症は鼻の粘膜などにある受容体にくっついて起るアレルギー反応で、ヒスタミンは化学伝達物質の一種で、特定の受容体にピッタリはまる性質がある。
 最近では、花粉症を抑える治療法として注射で乗り切ることができる。使うのはステロイドで、早い人では翌日には花粉症の症状が消え、効き目は数週間持続し、1シーズンで1回で済む人もいるが、ステロイド注射は賛否両論がある。ステロイドはもともと体内の副腎皮質から分泌されるホルモンだが、少量を短期間だけ使うなら安全だが、効き目が数週間持続するほどの量を使うと副作用が出ることがある。胃腸障害、顔のむくみ、高血圧や糖尿病の悪化、皮膚障害、免疫の低下(感染症にかかりやすい)、緑内障、頭痛、精神的な不安定などだ。日本アレルギー学会では安易にステロイド注射を使う危険性を呼びかけている。しかし、花粉症が重症で「
このままでは生活できない」という人にはありがたい特効薬で、ほかの薬では効果がなく、症状に苦しんでいる人の最後の切り札と考えられている。
 花粉症患者を年齢別に見ると、30代、40代、50代の働き盛りの人が多く、生産性の低下、医療費の観点からも大きな問題になってくるでしょう。また、最近では10代、20代の患者も多く、受験や就職の季節と重なって困っている人もいるようです。
 2003年春の杉花粉は過去の平均を上回る地域が多いようです。春に飛散する杉花粉の量は、前年夏の気象条件に大きな影響を受けるが、去年の夏は、多くの地域で気温・日射量ともに平均を大きく上回ったため、花粉の量も平年並み若しくはそれ以上になる見込みです。
 杉花粉症の患者さんは大抵、他の花粉に対しても花粉症を起こすことがある。地域によっては多少異なりますが、杉花粉が納まる時期が「
ヒノキ」の花粉の飛散開始の時期と重なる。症状が長引くと「ヒノキ」花粉症にもかかっている可能性もある。最近では「通年性のアレルギー性鼻炎」と合併されている人も多いため、1年中鼻炎の症状に悩まされている人も多い。
 抗ヒスタミン薬などの薬を服用した後に眠気やダルサを感じたり、自分はしっかりしているつもりでも、オフィスでパソコン入力にミスをする。別に眠くないのに勉強がはかどらない。こういう自覚がないのに精神・身体運動機能が低下している状態を「
インぺアードパフォーマンス」といい、薬の副作用によるものとして研究が進んでいる。薬の処方による一般的治療は、あくまで花粉症の症状を取る治療で、症状がおさまっているのは「治ったわけではなく、薬が症状を抑えているだけの状態」で花粉飛散中に薬を中止すると、すぐさま症状はぶり返します。よくなった状態を維持していくためには、ちょっと大変ですが花粉飛散終了までヒスタミンをブロックする薬剤等を飲み続ける必要がある。