平成26年(2014)8月豪雨







 先月30日以降の台風や前線の影響で、各地に起きた大雨被害について、気象庁は22日「平成26年8月豪雨」と名づけた。
 
 気象庁は、教訓を伝えると共に、復旧活動などを円滑に進めようと、大きな被害が出た災害について名称をつけている。22日に名づけられた“平成26年8月豪雨”は、先月30日以降に台風12号と11号、前線などに伴う記録的な大雨で、広島市など各地で起きた被害を対象としている。気象庁が気象被害で名称をつけたのは、12年7月の“九州北部豪雨”以来。

 先月30日から21日までの間、高知・香美市繁藤で平年の8倍の降水量を観測するなど、西日本を中心に大雨が降りやすい状況が続いている。これについて気象庁は、太平洋高気圧が本州の南東海上で強く張り出し西日本に、南からの暖かく湿った空気が流れこみやすい状況が続いた。

 現地では、大量の土砂と流木・倒壊家屋の中で、警察・消防・自衛隊・国土交通省等の皆さんが昼夜を分かたず、懸命に救出活動を続けています。心から皆さんに敬意を表したいと思います。引き続き、一刻も早い救命救助に全力を尽くすようお願いしたい。

 家を無くされた方々も多く、多数の方々が避難所等での不自由な状況に置かれているほか、いまだ電気・ガス・水道等のライフラインが寸断されている地域もあります。被災された皆様が1日も早く元の生活に戻れるよう、ライフラインの早期復旧に努め、食料・医療など、生活必需品の供給、メンタルも含めた健康確保のほか、被災者の生活再建に向けた支援等についても、政府一体となって速やかな対応を願うばかりです。

 この豪雨に共通する特徴として、日本列島への暖かく湿った空気(暖湿流)の断続的流入による大雨がある。2014年の7月末から8月中旬、太平洋高気圧の勢力中心は、例年より西日本方面への張り出しが弱く、本州南東沖に位置したことで、西日本は台風の通過経路となりやすく、また、暖湿流の南方からの流れ込みやすい状況を作り出していた。さらに上空の偏西風は、7月末から8月上旬は北偏してモンゴルから北海道の北付近を流れていたが、8月中旬は日本の西側、中国沿海部付近で南に、北海道東方沖で北に、それぞれ蛇行する“西谷”の状態が続いた。

 このような中、7月下旬に発生した台風12号は、偏西風が弱いために遅い速度で北上を続け、台風と太平洋高気圧それそれの暖湿流が継続して日本列島に流入する状態を促し、四国太平洋側を中心とした降水帯の連続的な通過を引き起こし、大雨をもたらした。同様の状況で、8月上旬に接近した台風11号もゆっくりとしたスピードで北上したが、10日に四国に上陸した頃から偏西風が南下し、前線が西日本の日本海側から北海道、東北付近にかけて伸び停滞を始めたため、ここ付近では断続的に大雨が降った。8月中旬は、偏西風の蛇行により前述したように西谷の状態が続き降水帯の連続的な通過により、引き続き日本海側を中心とする西日本や東北で断続的な大雨が降った。特に岐阜、京都、広島などで局地的な大雨となった。広島の大雨は、バックビルディング現象が原因と指摘されている。

 バックビルディング現象とは、成長期・成熟期・衰退期など異なるステージの複数の降水セル(積乱雲)が線状に並びつつ、一般風の方向に移動しており、成熟期や衰退期のセルからの冷気外出流により、移動方向とは反対の風上方向に新たなセル(積乱雲)が生まれるタイプのものをいう。日本の梅雨期の事例として、加藤・郷田(2001)は1998年8月上旬に新潟県下越・佐渡で起きた集中豪雨(平成10年8月新潟豪雨)解析し、梅雨前線上の一部で対流活動が一定以上継続すると収束が生じ、風上方向に新たなセルを生む原因になると報告している。

 一方、その1998年下越・佐渡の集中豪雨では、降水帯の先端だけでなく側方からも積乱雲がs湧き出す現象が観測された。