2千円札



 3年前に発行された2千円札は1度だけ見ただけで、わが家では他の記念紙幣と一緒にしまわれて、その後2度とお目に触れたことがない。

 2千円札は、偽造防止技術では他の3種の紙幣より進んでいて、ヨーロッパ・ユーロ札は角度を変えると色や模様が異なって見える「ホログラム」や傾けるとピンク色の模様が現れる「パールインキ」を採用したが、2千円札もパールインキのほか、ユーロにもない潜像模様(傾けると文字や数字が現れる)を採り入れている。

 今年1月〜3月に1万円札と千円札で2000枚、5000円札も280枚余りの偽造紙幣が見つかっているが、2000円札の偽造は81枚にとどまっている。

2千円札のハイテク技術の多くは、来年度発行される新札(10000円、5000円、1000円)にも使われる。偽造防止だけでなく、手で触っただけでお札の種類が区別出来る独特のインクの盛り上がりなども、他の札に導入される。

 新札が導入されることで自販機の読み取り機械の全面変更が行われるのに合わせた「2千円札も使われるようにしよう」とする自販機製造業者が現れることも期待できる。また、2千円札は横幅が5千円札と1_しか違わず、視覚障害者などから不評だったことから、新5千円札は2_違いにして、少しでも2千円札との区別が付きやすいようになる。

 来年度以降、どこまで2千円札の使用範囲が広がるかは分からないが、2千円札は手ごろで使いやすい紙幣とされ、消費者の「潜在需要」は高いとされる。米国では2千円札に近い価値の20j札が、全紙幣種の中で最も流通量が多いことを見ても、今後、流通が増えることが期待できる。

 2000年7月に沖縄で開かれた主要国首脳会議(沖縄サミット)にあわせて2千円札が発行されてから、7月19日で3周年を迎える。自動販売機や銀行の現金自動預け払い機(ATM)でほとんど使えないことから普及しなかったが、徐々に流通量も増え、今月中に発行枚数は5千円札を上回る見通しだ。来年度には1万円、5千円、千円に新札が導入され、自動販売機やATMが一新されるのを機に、2千円札も一気に普及が進む可能性が高まっている。

 今は嫌われ者の2千円札は発表から発行開始まで9ヵ月しかなく、ほとんどの自販機や銀行のATMで利用できない紙幣となってしまったことが普及を妨げる一因となった。色合いが似ている5千円札と間違いやすいこともあって小売店で嫌われ、初年度に流通したのは僅か約1億2千万枚と、1万円札の1/40以下にとどまった。

 少しでも普及させようと財務省は2001年10月、ATMと券売機を2千円札対応にするよう金融期間と鉄道会社に要請した。財務省も省内の郵便局でのお釣に2千円札を多数混ぜたり、担当職員への給与の一部を現金支給にして2千円札を入れ、日銀も2千円札の両替窓口を設けるなど努力を続けた。

 表紙に印刷された守礼門の地元・沖縄県の民間企業や銀行でも、ボーナスを全額二千円札の現金支給に代えたり、ATMでの取扱を可能にしたところがあった。2千円札を使用するコンビニも登場した。

 こうした地道な普及策の結果、2千円札の流通枚数は今年6月末で約4億3千万枚(これまで発行された全紙幣の3.5%)にまで増え、5千円札の約4億4千万枚(発行された全紙幣の3.6%)にあと一歩と迫るまでになった。1万円札(64臆8千万枚、発行された全紙幣の52.9%)、千円札(32臆5千万枚、発行された全紙幣の26.5%)には遠く及ばないが、今月中には5千円札を抜いて最下位を脱する可能性も出ている。
 
 ただ、流通枚数は日銀から外に出たお札の枚数のことで、店や家庭など、市中でやりとりされている枚数とは異なる。「銀行に死蔵されている枚数は、2千円札の方が5千円札よりずっと多い」(財務省関係者)と見られ、暮らしで目にする回数はまだ5千円札の方が多いというのが実感だ。

札の種類  絵   柄  発         行  停         止
1円 武内宿禰 1885年(明治17年) 1958年(昭和33年)
5円 彩紋 1946年(昭和21年) 1955年(昭和30年)
10年 国会議事堂 1946年(昭和21年) 1955年(昭和30年)
50円 高橋是清 1951年(昭和26年) 1958年(昭和33年)
100円 聖徳太子 1946年(昭和21年) 1956年(昭和31年)
100円 板垣退助 1953年(昭和28年) 1974年(昭和49年)
500円 岩倉具視 1951年(昭和26年) 1994年(平成 6年)
1000円 聖徳太子 1950年(昭和25年) 1965年(昭和40年)
1000円 伊藤博文 1963年(昭和38年) 1986年(昭和61年)
1000円 夏目漱石 1984年(昭和59年) 現在(2003年)継続
2000円 守礼門 2000年(平成12年) 現在(2003年)継続
5000円 聖徳太子 1957年(昭和32年) 1986年(昭和61年)
5000円 新渡戸稲造 1984年(昭和59年) 現在(2003年)継続
10000円 聖徳太子 1958年(昭和33年) 1986年(昭和61年)
10000円 福沢諭吉 1984年(昭和59年) 現在(2003年)継続

●現在通用するもの、他に人物が同じものもある。


読売新聞より