津波








 津波は、環太平洋造山帯の一部をなす日本では昔からよく知られている。津波といえば日本の専売特許と思われているが、2004年12月26日に発生したインドネシアのスマトラ島沖を震源とする地震はマグニチュード9.0という大地震だったが、インド洋全体に波及する津波は、今年に入っても連日テレビニュースが、死亡者の数を発表している。

 外国人観光客が「tsunami」と叫びながら撮影された映像が繰り返し放映されているが、「津波」が世界共通語になっていることに気付いた。われわれは、大なり小なり地震があれば「津波」が発生すると脳裏をかすめるほど日常茶飯事の様に思っているが、現地では、何が起こったのかと戸惑っている様子がうかがい知れる。

 日本では、津波は何時から使われ出したか?文書によれば「津波」が登場するのは1611年徳川家康側近が書いた「駿府記」が初めてという。それまでは、「四海波」などと呼ばれていたが、決まった表現はなかった。

 「津波」とは、(津=つまり「港」を襲う「波」ということで、この現象の特徴を実によくあらわしている。津波の波長は長く、台風の高波がせいぜい300mなのに対し、大きな津波は波長は100kmを超えるといわれ、海上では周囲全体がゆっくり上下するため津波が感じ取れないことが多い。

 津波が真の姿を現すのは、陸に打ち上げる際だ。特に湾の奥では、津波のエネルギーが集中するため、直線海岸より被害が何倍にも大きくなる。「湾の奥」には港が立地しやすく、津波の力はまさに「津」で爆発するが、1896年の大津波が、三陸海岸で20,000人以上の死者をだした。繰り返し発生する度に津波被害を受けてきたのは、皆さんご存知の通り、その辺の湾がリアス海岸が多いためでもある。

 英語で「tsunami」が一般化したのは1946年に発生したアリューシャン地震による津波が「ハワイ」を襲い、被災した日系人が口にした「ツナミ」という言葉が地元紙に使われたのがきっかけだった「タイダル・ウェーブ(tidal wave)」という言葉もあるがtideとは潮の満干。これが伊・西語のマレモーとに「誤った名称」(大英百科事典)だったことも、「tsunami」の定着を促した。

 欧州でも、人口の1/4が犠牲になった1755年のリスボン大地震では大津波が発生し、波は英仏海岸にも押し寄せている。しかし、地中海沿岸の一部を除けば欧州は津波に縁が薄く、「津波」を意味する各国語も正確さにかけた。比較的津波に縁のあるイタリアやスペインでも、津波を意味するmaremoto(マレモート)は、「海底地震」意味にもなる。不正確さを嫌ってか、最近では「tsunami」の使用が増えている。

 お隣の韓国では、漢字語で「海溢=ヘイル」、また、中国では、「海嘯=ハイシャオ/かいしょう」という。「海嘯」は本来「海鳴り」の意だが、津波では海がうなるように聞こえることから、日本では「海嘯」も「つなみ」と訓じて使った。この用法が明治期、中国に逆輸入されたといわれる。






●津波予報の種類

予報の種類 予報文 発表される津波の高さ
津波警報 大津波 高いところでm程度以上の津波が予想されますので、厳重に警戒 3、4m、6m m、10m以上
津波 高いところでm程度の津波が予想されますので、厳重に警戒 m m
津波注意報 津波注意 高いところで.m程度の津波が予想されますので、注意 .m


津波の特性

 津波の波高の成長過程や速度は月の引力・地球の自転・太陽の引力等によって生じるいわゆる干潮・満潮等の規則的な潮汐とは異なった特性をもつ。津波は潮汐による波に比較して高速に伝わり、平均深度が4000m程度の太洋では伝播する際のエネルギー損失が少なく、ジェット旅客機並みの時速800kmに達し、太洋を隔てた震源地で生じた津波は十数時間かけて太洋を横断して沿岸域に被害をもたらすことがある。加えて、建物や建造物等に大きな揺れで被害をもたらすことの多い地震波のS波が岩盤を伝播する速度が、秒速3−4kmと非常に高速ではあるものの揺れが減衰するのに対し、津波では地震波よりも到達時間が多くかかるが、エネルギー損失が少ないので甚大な被害をもたらすことがある。

 サーフビーチのような海浜で見られる波は、大気の変動で生じた嵐などの風により生じたもので、その間隔は概ね10秒間隔で波長は150mである 。これに対し津波の間隔は、短いもので2分程度、長いものでは1時間以上のものがあり、100kmを越す長波長のものがある。

 一般的に水中地震では3−5個のはっきりした波を隆起させ、2番目若しくは
3番目の波が最も大きくなる傾向がある。
津波の第一波が襲来する前には、遠浅の海浜で800
mを超える干潟が生じた例があり、津波の恐ろしさや知識のない人々は、突然生じた干潟に残された魚を集めることもあり、被害を大きくすることがある。

 一般的に、遠浅の海で起きる波では、水深と個々の波の間隔を示す波長の比率は、海底の摩擦により非常に小さくなる 一方、嵐などの大気の影響で起きる一般的な波に比べて津波の波長は大きく、深海を伝播して到達した津波は浅瀬で被害を及ぼす。浅瀬における波の速度は重力加速度と水深を乗じた値の平方根に等しく、例えば平均的な水深が 4000m の太平洋を渡る津波ではごく少ないエネルギー損失の結果、平均して秒速 200m (時速712km, 時速 442マイル)の速度で伝播する。水深が 40m では速度がより遅くなるものの秒速20m (時速 71km, 時速 44マイル)であり、もし津波に遭遇して人間が速く走ったとしても、津波から逃れることは非常に難しい。

 際は、速度は減少するもの波の高さは急上昇する。一方で、海底までの距離が相当ある海上にいる人たちは、津波の存在にはおそらく気付かないが、沿岸部や島嶼に波が達し押し寄せる時には、波高は 30m以上に成長し、もし沿岸部や島嶼部に遠隔操作による計測機器が備わっていて津波を予期することができたとしても、観測機器は被害を留めることはできず、周辺域や都市施設に情け容赦ない破壊と被害をもたらす。

 津波は発生源を中心にして外側に伝播するため、津波の通り道から影になる陸地が存在する場合は通常は安全であると考えられるが、盾となった陸地の周囲にも波は回折して内側まで回りこみ、被害をもたらすことがある。加えて、盾となった陸地から反射した波との干渉により生じた波が影響を与えることもある。この例はスマトラ沖で発生したスマトラ島沖地震の津波がインド大陸とスリランカを経由した後のアニメーションから見てとることができる。さらに、津波によって生じた波は自然地形や発生源の形状により、必ずしも対称形ではないために他の方向に比べて一方向がより強大になる可能性もある。

高さ

 陸地は近付くに従って水深が浅くなることから、津波の先頭部分は徐々に速度が下がっていくが、後続の波が追い付き覆い被さることから、波の高さが上昇して更に大きな高さの津波に成長する。陸地の海岸線の形状は様々であり、湾や入り江では行き場を失った波は高くなり、リアス式の地形では急激に入り江の幅が狭くなるため津波は一層高くなる。なお記録に残る最大の津波は、1958年7月にアラスカのリツヤ湾において、地震により発生した地すべりと地形的要因により起きた津波(高さ約520m)といわれる。

速度

 津波の速度は海底までの水深や海岸線の地形に影響を受け、水深が深いほど津波の速度は速くなる。津波が伝搬する秒速はgを重力加速度、dを水深とした場合、次式で算出する。海底までの距離が相当ある海では、津波の持つエネルギーは殆ど減少せず、津波の速度は水深にのみ左右されるため、波が陸地に接近する

G[M/SEC ]D[M]

上式により、水深10m で時速36km、水深100m で時速113km、水深500m で時速252km、水深5,000m で時速 797km となる。

津波による被害を起こした地震

地   震 年号 内容予報文発表される津波の高さ
元禄大地震 1703年 津波高さ8m以上。20mの地点もあり。 東海道が壊滅的被害。
死者不明者20万人程度(火災による死者を含む)
八重山地震 1771年
(石垣島)
津波高さ85m、死者不明者 9,300人
明治三陸地震 1896年 岩手県綾里 津波高さ38m、死者不明者 22,000人
関東大震災 1923年 9月1日11時58分に伊豆大島付近、相模湾で発生した地震。
マグニチュードは7.9。
昭和・三陸地震 1933年 死者不明者 3,000人
東南海地震 1944年 12月7日に、三重県志摩半島の沖合を震源として発生した
大地震のこと。地震の規模を示すマグニチュード8.0。
三重県、愛知県、静岡県を中心に1,223名の死者・行方不明者
南海地震 1946年 紀伊半島の熊野灘沖から四国南方を震源とする周期的な
大地震の呼称。12月21日午前4時19分に和歌山県潮岬沖で
発生したマグニチュード
8.0。死者は行方不明者を含めて1,330名
(和歌山県261名)、家屋全壊が
11,591戸、半壊23,487戸、
流失1451戸、焼失
,598戸 。
チリ地震 1960年 死者不明者142名。地震発生の22時間30分後に18,000km
離れた三陸沿岸に襲来した。
日本海中部地震 (1983年 5月26日11時59分57秒に、秋田県能代市西方沖約100km
の地点で発生、マグニチュード
.7。104名の犠牲者を出す。
(韓国でも、死者1名、行方不明者2名)全壊家屋は9000戸、
半壊家屋は2100戸に達し、被害総額は1482億3827万円余。
北海道南西地震 1993年
(奥尻島)
津波高さ30m、死者不明者231名
紀伊半島南東沖地震 2004年 紀伊半島南東沖で地震が発生。津波注意報が震源地に近い
沿岸部に発令された。マグニチュード
6.9、震源の深さ38km
0時03分ごろに愛知県外海、三重県南部、和歌山県に津波
警報が発令。マグニチュード
7.4、震源の深さ44km
23時58分の地震のやや東で地震発生。最大の余震、
マグニチュード
6.4、震源の深さ41km。
スマトラ沖地震 2004年 津波高さ10m、インド洋沿岸各国やアフリカ東部で
22、7万人以上の犠牲者。

地球への影響